2012年6月28日木曜日

新刊! 『石坂洋次郎「若い人」をよむ 妖しの娘・江波恵子』


吉田書店7冊目の本が出ます。
ちょっと長めのタイトルですが……
『石坂洋次郎「若い人」をよむ 妖しの娘・江波恵子』(柏倉康夫著、1800円+税)。http://www.yoshidapublishing.com/booksdetail/pg539.html

『若い人』という作品自体、柏倉先生にお聞きするまで、恥ずかしながら私は知りませんでした。(『青い山脈』なら知っていたわけですが。)
『若い人』は、昭和8年から5か年にわたって『三田文学』に連載され、空前のベストセラーとなった長篇小説です。舞台は、旧制の女学校。26歳の国語教師・間崎慎太郎と女学生・江波恵子、そして橋本スミ子という若い女性教師をめぐる物語。「三角関係」なんて言ってしまえばそれまでですが……。

『三田文学』での連載が終わり、昭和12年に改造社から単行本化され売れに売れたため(改造社の社運を再興したと言われるらしい!)、すぐに映画化もされたとのこと。そして、(私が調べた限りでは)戦後も3回(1952年、1962年、1977年)映画化されています。石原裕次郎と吉永小百合が演じた1962年版はDVDにもなっているようです。
 
本書は、そんな作品をもう一度読んでみよう、というわけです。ヒロインの江波の心の動きや言動、行動に注視しながら……。実に魅力的な女性なのです! 著者の柏倉先生自身は、本書「はじめに」で述べているように、高校時代に『若い人』を読み江波恵子の魅力にとり憑かれたとのことです。

 図書館などにある、中公の「日本の文学 58」では2段組みで500頁近いわけですが、本書は、そのダイジェスト版といった位置づけも可能かもしれません。そうした読み方をしていただいても嬉しいですね。

戦前にはこの作品のある部分が不敬罪にあたるなどとして告訴されたり、また、石坂自身が細部について後年まで何度も書き直していることがわかったり(各社から多くの版がでています)、という面なども、興味深いところです。

ぜひ、多くの人に手に取っていただきたいです。特に、これまで吉田書店と縁のなかった人たちに(笑)。

装丁も素敵に仕上がりました!
デザイナーの折原カズヒロさんには幾つもラフ案も出していただきまして。また、著者の柏倉先生の御紹介で、口絵は、若い版画家の加藤茜さんという方にお寄せいただきました。ヒロインの江波を想像して銅版画を制作いただきました!
ぜひ、本文と併せてご覧いただきたいものです。

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