2011年5月27日金曜日

本を出します(『指導者はこうして育つ』)

2冊目の近刊案内として『指導者はこうして育つ――フランスの高等教育~グラン・ゼコール~』についてご紹介したい。
この本は、柏倉康夫著『エリートの育て方――グランド・ゼコールの社会学』(ちくま新書、1996年)の改訂版、という位置づけである。
著者の柏倉康夫先生は、放送大学名誉教授で、元NHKの記者、パリ支局長、解説主幹などを務めたかただ。場合によっては、マラルメ研究の第一人者、という紹介がいいのだろうか。筑摩書房、左右社などから多数の著書が出ている。
学生時代にジャーナリストを目指していた私にとっては、やはりパリ特派員としての印象が強い。この本も、当時NHK解説主幹としてご活躍中に著されたものだ。
さて、この本のどこに魅力があるのか。
なんといっても、私たち日本人が直面する教育問題、政治問題を解く手がかりを与えてくれるのである。
ヨーロッパから学ぶものは何もない、というのはまだ早い。まずは彼方の真の姿を覗いてみようではないか。
例えば、大学入試だ。ちょうど、震災前には京大入試のカンニング事件などがマスコミを賑わしていたが、もし、以下のような入試問題だとしたら、カンニングなどあり得ただろうか?

「幻想のない情熱というのはありうるか?」
制限時間4時間で、論文で答えよ。……

私など、頭を抱え込んでしまう。
フランスの大学入試(バカロレア)では、文科、理科を問わず、哲学を受験しなければならないらしいのだ。
その問題が、例えば上記のようなもの。
もちろん、そのための参考書はある。虎の巻だってある。
しかし、此方、日本の受験と比べれば、遥かに意義ある問題に思えてしまう。

この本は、単にフランスの教育を紹介するためのものではない。私たちの日本の将来を考えるために寄与するはずだ。
「リーダー不在の日本」。そんな声を誰もが評論家のように叫ぶ。だったら、リーダーたる人物を社会全体で育てようではないか。ぜひ、その糸口を見つけてほしいとの願いを込めて、この一冊を送り出したい。

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